第28回「Life in Shizuoka」では、浜松市で通訳などの仕事をしつつ、地域の一員として町内会の活動等に積極的に参加されている、ブラジル出身の中島イルマさんを紹介します。
氏 名 :中島イルマ雅恵さん
出身国 :ブラジル
居住地 :浜松市
職 業 :浜松日本語学院・静岡県立浜松北高等学校・浜松外国人医療援助会(ボランティア)・
HEALTHY FAMILY はままつ(ボランティア)・放課後等デイサービス子ども支援センターはままつ
-どんな仕事をしていますか?
現在は、県立高校や日本語学校で、通訳や翻訳の仕事をしています。具体的には、生徒・保護者の通訳、ホームページの翻訳などを行っています。そのほかにも、外国人学校で無料検診会を行う団体の通訳ボランティアや、発達障害を抱える子どもの放課後デイサービス(福祉施設)のお手伝いをしています。
- 話せる言語を教えてください。
ポルトガル語と日本語です。祖父母が日本人だったため、小さい頃に少し日本語を学んだ事がありました。しかし、ブラジルの小学校に入学したため、日本語を話す機会が少なくなりました。その後、20歳で日本に来日しましたが、来日した当時はあまり日本語が話せず、仕事や生活をしながら日本語を勉強しました。来日当初は、浜松の遠州弁が怖く感じられ、「何でこの人たちは怒っているんだろう・・・。」と感じていました。
-自分の出身国をひとことで表現するとどんな場所ですか?
「楽しい」場所です。街に行っても、海に行っても楽しいですし、カーニバルもあって、とにかくなんでもある場所です。私はサンパウロ出身ですが、住んでいた地区のカーニバルのチームがサンパウロでも名門のチームで、かつてはサンパウロで一番を取るようなチームでした。最近は、あまり成績が良くないこともありますが、サンパウロで唯一リオのカーニバルに出たこともあり、誇りに思っています。
料理も色々な料理があります。肉や豆のイメージが強いかもしれませんが、海老などのシーフードやピラニアなどちょっと変わった食材を使った料理もあります。
- 海外の友人があなたの母国を訪れたら、どんなところへ案内しますか?
海岸ですね。私はサンパウロ近郊の海岸に行ったことがありますが、ブラジルの海岸線はどこも非常に綺麗で、地域によって海や砂浜の特徴が異なるため様々な楽しみ方が可能です。
-海外の友人があなたの母国を訪れたら、どんな料理でもてなしますか?
アホス・コン・フェイジョン(Arroz com feijão)ですね。ごはん、豆(フェイジョン)、ステーキ、サラダ、目玉焼きをワンプレートにのせ、塩やニンニクで味付けをしたブラジルの家庭料理です。ブラジルでは日常的に食べられている料理だと思います。目玉焼きは日本の目玉焼きとは少し異なり、油で揚げたような目玉焼きです。
今も、日本でブラジル料理を作ることもあります。最近では、“キャサバ芋”を使ったスープを作りました。キャサバ芋は、ブラジルの原住民の主食だった芋で、見た目は長芋のようですが、色々な調理方法で食べることのできる芋です。スープはもちろん、揚げたり、ピューレやケーキにして食べたりすることもできます。
-普段、どのように週末を過ごしますか?
町内の行事に参加したり、子どもの用事を済ませたりすることが多いです。最近では洋裁を習い始めました。
-町内会では、現在、どういった役割をされていますか?
現在は自主防災隊の隊員として活動しています。主に12月に行う自主防災訓練の企画・準備・運営などのお手伝いをしています。うちの町内会では自主防災訓練にとても力を入れて取り組んでおり、組織や当日の役割などが非常に細かく決まっています。私自身は、自主防災訓練の役割を担うようになって今年(2018(平成30)年)で7年目になります。
-町内会に参加されたきっかけは何だったのですか?
やはり、子どもが一番のきっかけです。子どもを通じて、子供会やPTAなどの活動とかかわりを持つようになりました。このような活動については「外国人だから、やらない」という外国人も多いと思いますが、私は参加したほうが良いと思います。地域の人と顔の見える関係になりますし、何か分からないことがあったら聞くことができるようになります。子育ての制度や小中学校への入学、高校受験などブラジルと日本では何もかもが違います。そうしたことを、他の人に相談し、分からない事を聞くことができる環境があると、とても助かります。
-浜松の町内会というと、やはり「浜松まつり」も大きなイベントですよね。町内会の活動で浜松まつりに関わられた経験がありますか?
私は5年程前に子ども会の会長もしていました。子ども会の会長は、浜松まつりでも非常に重要な役割を持っており、お祭りの開催期間のうち、3日間朝から晩まで、練りの一番前に出て町内をたくさん練り歩きました。
子ども会の会長をしていたとき、私は乳がんと診断され、闘病生活を送りながら、子ども会の会議や準備なども行わなければなりませんでした。そのため、すごく大変でした。本当に病状がひどいときは言葉が話せない時期もあったほどです。しかし、偶然にも主治医の先生の子どもが私の子ども会に参加しており、主治医の先生も祭りの間ボランティアで私にずっとついて歩いてくれたので、浜松まつり当日は安心して参加することができました。
お祭りのほかにも、それまでになかった流しそうめんの活動を企画したり、さまざまな経験をすることができました。
-とても積極的に町内会の活動に関わってこられたのですね。学校でもPTAで活動をされていたということですが、どのような活動をされていましたか?
子どもの行っている幼稚園や学校でPTAの役員をしていました。子どもが2人おり、何度かPTAの役員をしたのですが、下の子が小6の頃にも役員をすることになりました。子どものいた学校では、卒業式の後に卒業生みんなで卒業パーティーを行うという伝統があり、そのパーティーは小学校6年のPTA役員が、企画・準備をします。私が役員をした年のパーティーも、子どもたちの写真のスライドショーを自分たちで作成したり、知り合いのブラジル人マジシャンを呼んでショーをしてもらう手配をするなど、準備がとても大変でした。しかし結果として当日は、とても盛大なパーティーをすることができ、楽しかったです。
- 静岡県の中で一番好きな場所はどこですか?
一番はやっぱり富士山です。5合目までしか登ったことはありませんが、眺めるのが好きです。浜松でも場所によっては富士山が見えます。本当は富士山の近くに住みたいのですが、浜松からも離れたくないので困っています。その次に浜名湖が好きです。昼も夜もとても綺麗で、何かストレスがあっても、浜名湖の周りを1周するととても癒されます。
- あなたの母国から家族(友人)が尋ねてきたら静岡のどこへ案内しますか?
まずは浜松まつりです。浜松ではお祭りに誇りを持っている人が多く、うちの家族も1年中楽しみにしています。友人が来たら、浜松まつり会館で丁寧にお祭りの説明をしたいですね。それから、先ほども述べたように浜名湖です。また日本平に新しく「夢テラス」ができたということなので、ぜひそこに行って、富士山を眺めてみたいです。
- 静岡県(日本)の食べ物のなかで一番好きなものは?
うなぎですね。やっぱり美味しいです。でも、高価だから頻繁には食べられませんね。
- 外国人の活躍しやすい静岡県になるために何が必要だと思いますか?
外国人が日本語能力を高めることと、外国人と日本人の寄り添う気持ちだと思います。
私は、自分と自分の家族など愛する人を守るために、外国人にも日本語が必要だと考えています。例えば、子どもが病気になったとき、急に倒れてしまったときに日本語が分からなければ助けを求めることができません。通訳は24時間どこにでもいてくれるわけではありません。そもそも、日本語が分からなければ入ってくる情報量が違います。自分と愛する人を守るため、日本語は欠かすことができません。
また、日本人の多くの人は、外国人を「支援してあげないといけない存在」、「助けてあげないといけない存在」というように考えがちだと感じます。しかし、私はそうではないと思います。日本語ができず、情報を持っていないだけで、身体能力も思考力も十分にあると思います。ですので、かわいそうと思うのではなく、彼らと寄り添う気持ちを持って、同じ生活者として扱っていくべきだと思います。本当に重要な情報が彼らに届くような工夫も必要ですね。浜松は多言語での情報提供がとても進んでいますが、逆に情報が多すぎて、何が重要なのかわからないという場合があるようです。重要な情報とそうではない情報が見分けやすい形で情報提供が必要だと思います。
外国人の側も待っているだけではダメだと思います。お祭りなどに関して、外国人から「呼ばれてないから行かなかった」、「誰も呼んでくれない」という声を聞くこともありますが、お祭りは参加したい人が参加するというのが基本であり、自分から行かなければ参加できないと思います。そういった意味で、外国人も寄り添う気持ちが必要だと思います。
- 静岡県の人々に一言お願いします。
静岡県の人たちが誇りに思うお茶、食べ物、偉大な方々と同じように、県内の外国人のことも誇りに思えるように頑張っていきたいと思います。
-最後に海外の人々に向けた静岡PRをお願いします。
静岡県はとても恵まれたところで、海、湖、山、どこへ行っても素晴らしい景色と美味しい料理に出会えます。
誇らしい富士山、綺麗な浜名湖、楽しい体験と、美味しい料理を堪能できるのは静岡県だけです。絶対に、遊びに来る価値があります。